注目

同志社人インタビュー第16回 ~株式会社鍵善良房 今西 善也さん~

同志社人インタビュー第16回目は、前回の名高 新吾さんにご紹介いただいた、株式会社鍵善良房 今西 善也さんにインタビューを行いました。
祇園にある鍵善良房四条本店を訪問し、貴重なお話を沢山お伺いすることができました。
ぜひ最後までご覧ください!

(四条本店にて)

今西いまにし 善也ぜんや氏 株式会社鍵善良房 代表取締役社長

1995年同志社大学経済学部卒業

インタビュアー
・同志社大学理工学部機械システム工学科4年次生 小峠ことうげ みやび(写真:右)

・同志社女子高等学校3年⽣ 睦好むつよし 美月みづき(写真:左)

Q.鍵善良房は約300年の歴史を持つ老舗ですが、伝統技術の継承と新しい挑戦(ZENCAFEや美術館ZENBI等)の間で、代表取締役として今西さんが大切にされている“軸”は何でしょうか?

A.江戸時代中期から京都でやっていると、昔からながらのお客さんと、そのお客さんも代々ずっとうちで買ってくれてはる人が多いんで、その「信用」と「信頼」を裏切らないようにっていうのを一番大切にしてます。うちらが取り扱うようなお菓子っていうのは、例えば結婚式の引き菓子であるとか、お祝い事とか、皆さん節目節目に「一番良いものを」と思ってうちのお菓子買って届けはるので。その辺はすごく緊張感を持って、良い材料を使って良い品物を作るということと、良いサービスということを大事にしています。和菓子って日本の農業と密着しているので、その年の天候とかによって、良いものが取れたり取れなかったりっていうのがあって。その辺は産地であったり、その間に入る問屋さんと話して、なるべくその中でも私たちがいいなと思うものを仕入れてもらうようにしています。サービスでは、お客さんの好みに合わせた商品もオリジナルで作ったりするので、ご要望をいろいろ聞きながら、私たちからも「こんなんにしたらいいんじゃないですか?」っていう提案をしています。ただ昔ながらというだけでなくて、お客さんも時代時代で変わってきているので、なるべくお客さんのニーズというのも捉えながらやっていけたらいいなと思います。

Q.今までどういったお菓子とか作られたのですか?

A.会社の式典で、「創業〇周年に皆に配るお菓子を作りたいんです!」って言われたら、その時は店のロゴのお菓子を作ったりとか、「自分の子どもが今度、踊りの発表会するんです!」って言われたら、踊りに出てくるようなモチーフのお花のお菓子を作ったりとか、そんなことをやっています。

Q.京都および祇園という地域との関わり方(文化継承、地域行事、観光事業など)で心がけていらっしゃることはありますか?また、地域資源をどう事業に取り込んでいらっしゃいますか?

A.京都にたくさんお菓子屋さんがある中で、うちは特にこの祇園町で長年商売させてもらっています。八坂神社とか清水寺とか、東山の観光地にあるということで、「祇園町があってこそ、うちのお店がある」という風に考えているので、なるべく地元の町づくりとかそういう取り組みにも参加しています。うちだけ良ければいいという訳ではなくて、地域全体で良くなるという風な取り組みを行っています。特に、7月には祇園祭りがあるので、皆でお祭りを一生懸命やったりとか、地域のいろんな清掃活動をしたりとか、あとは商店街でいろいろとイベントをしています。

Q.看板商品の「くずきり」や和菓子作りで特にこだわっている点はなんですか?

A.くずきりに関しては、もともと祇園町で遊ぶ人たちのデザートとして作ったというストーリーがあるので、そういうのを大切にしながら、くず粉を作る方に話しながら一番いいくずを納めてもらったり、水にこだわったり、器にこだわったりしています。喫茶で食べてもらうので、お客様が食べるだけではなくて、食べる時間を豊かに過ごしてもらえるように店の雰囲気を大切にしています。

Q.くずきりの器にはどのようなこだわりがあるのですか?

A.もともとは一人の作家が作った、螺鈿という貝がキラキラとした器で、祇園町で遊ぶ人のところに出前していたんですね。今は、輪島塗りの豪華な塗りで、昔のお弁当箱の形に入れて提供してます。京都のお菓子は結構季節感を大事にするので、梅の花が咲き始めているので、梅を出すと「もうそろそろ梅やな。」ってみんなが感じるようなものを心がけています。今はまだ寒さが厳しいけれども、春を感じられるようなものが出始めています。

Q.今、洋菓子が人気になっていて、和菓子離れが取り上げられることもありますが、若い世代に和菓子の魅力を伝えるために工夫されていることはありますか?

A.もともと僕らがこの業界に入った時から「和菓子離れ」って言ってたし、若い子が食べないって言ってたのはずっと続いてるんで、あんまり離れてるイメージはないです。けど、若い人が知っているようなブランドさんとコラボレーションしたりとかしています。例えば、今祇園にフランスのagnès b.さんのカフェがあったりすると、そこで和菓子作って出してもらったりとか、京都BALにあるRon Hermanさんと、周年で一緒にお菓子作ってたりとか。そういう若い人たちが利用するようなところでちょっとでも見てたり、口にしてもらったら、どこか記憶に残るかなと思っています。

Q.鍵善良房本店に美術館を併設するというユニークな試みで、来店客の購買行動やブランド理解に変化はありましたか?

A.ミュージアムを作った何個かある理由の一つに、くず切りの器を作ってくれた黒田くろだ 辰秋たつあきっていう木工の作家さんの作品があるので、それをきちんとアーカイブして将来に残せるような場所を作りたいと思いました。鍵善のお客さんがミュージアムに行ってというイメージをしていたんですけれども、最近はミュージアムでいろんな展覧会をすることによって、イベントに来た人が鍵善を知るということもあるので、宣伝の意味合いでは良い効果があったのかなと思っています。私自身もアート関係の人と知り合う機会があって、お菓子だけ作ってたら知り合わない人と出会ったりしています。もし、美術館がなければ、一緒にお菓子を作ったりとかグッズを作ったりということがなかっただろうなとは思っています。全然生まれ育った文化が違う人に、うちのものを見て「これ面白い!」ってなって、もう一回意味の再構築をしてお菓子を作るっていうのはなかなか面白かったです。

Q.これから挑戦したいことや、お客様に届けたい想いはありますか?

A.菓子屋なんで、食べてもらって美味しい、楽しんでもらうというのが一番大事なので、せっかく作るならたくさんの人に食べてもらいたいし、たくさんの人に知ってもらいたいなと思っています。いろいろなアイデアをもらって新しいものを作ったりしているけど、なかなか常時の商品になることが少なくて。また、昔ながらの商品がだんだん売れなくなってきて廃番になることも多くあります。昔ながらの良さというものを知ってもらいたいので、なるべくなくすことなく今の皆さんに食べてもらえるように、ちょっと作り直すなり工夫して買ってもらえるようにということをいろいろ考えてやっています。

Q.今西さんがされている仕事にはどのようものがあるのですか?

A.部署の責任者のマネジメントや最終決済をしたり、お菓子を全部チェックして、味見もします。自分もお菓子はずっと作ってたんで要領は分かるので、これはこうした方がええんちゃうかっていう話はフィードバックしています。

Q.大学時代はどんな学生でしたか?

A.もともと高校の時は映画とか好きで、映像系のサークルとかに入りたいなと思ったけど、気がついたら、ラグビーのサークルに入ってました(笑)。高校生の時はちょっとだけラグビーをやっていたので、高校の同級生とサークル見に行って一緒に入ったら、気がついたら友人はいなくなってました(笑)。同好会で、体育会系ではなくて普通のサークルやったんですけど、田辺の広いグラウンドでラグビーしてました。アルバイトは、映像が好きだったんで、レンタルビデオ店で働いたりとか、居酒屋で焼き鳥屋で働いていました。

(大学のラグビーサークル エルフィンズでプレーしていたころ)

Q.学生時代から、お菓子作りやお店の仕事につながるようなことに関心はお持ちでしたか?

A.高校生ぐらいの時から、妹がいるけれども、いつかはここに帰ってこないといけないのかなと思ってました。結局みんなが就職活動をしている時も、就職活動をしていないままでした。東京には行きたいってずっと思ってたので、「帰ってくるから3年東京行かせてくれ!」っていうことで、親の知り合いの東京のお菓子屋さんで働きました。

Q.どのような生活でしたか?

A.芝浦にある工場に朝早くから行って、めっちゃ忙しい工場だったので22時ぐらいまで働きました。最初は京都の菓子屋の息子が来たって言って、全然愛想悪かったけど(笑)。肉体労働なんで、ラグビーもやったし体動かすの嫌いじゃないから、体力で示してちょっとずつ打ち解けて、一緒にお酒飲んだりして楽しかったです。

(大学のラグビーサークル エルフィンズでプレーしていたころ)

Q.同志社時代に「これは今でも心に残っている」と思うような出来事や出会いはありますか?

A.僕は高校時代に部活動を真剣にやっていなくて、途中で辞めたりしました。大学時代にはラグビー同好会でしたが結構強い、体育会と同じような歴史があるチームに入っていました。強豪チームに先輩が勝った時にみんな泣いてはって、こうやって真剣に取り組まはるんやなと思ったら、ちょっと自分もうるっときました。何のサークルでも、一生懸命やる人たちがいるんだなっていうのが、すごく勉強になりました。ゼミは、毎月本読んで、レポートを書くのをずっとやってて、それはすごく勉強になりました。文章を書くのも好きだったんで、面白かった。僕は経済学部やったけど、文章を書くっていうトレーニングはすごく今でも生きてる感じがします。僕は、文章書くことは嫌いじゃないので、本を出した時も文章はすべて自分で書きました。

Q.学生時代に学んだことや経験したことの中で、今のお仕事に活きていると感じることはありますか?

A.人に流されることなく自分の意見を持ち、人間関係を自分で作ってやっていくとか、自分のために時間を作るのは今も活きてるかなと。サークル活動とか大学の友達は今でもつながりはあるし、人を裏切らないとか、人を大事にするということはありますね。大学の講義って先輩が「これ取ったらええで!」って言ってとる人もあるかもしれへんけど、やっぱり自分で勉強することは自分で選んでとか、自分のプランを作っていかなあかんっていうのを4年間で学びました。ポジティブに自分から動くことってすごく大切やなと思います。だから、就職活動してるとやっぱり人の時間に合わせてしまうとか、流されてしまうかもしれませんが、自分の考えでなんか違うじゃないかって感じることはすごく大切かなと思います。

Q.今西さんにとって同志社とはどのような存在でしょうか。

A.同志社ってやっぱり、京都ですごいブランドやし、関西でもちょっと抜けていると思うんで、すごいなぁと思います。同志社人脈ってすごいんで、そういうのを活用していくにはいいのかな、みんな仲いいしね。あと京都の学校だからか知らんけど、ふんわりしてる人、やわらかい人が多い感じがします。大企業のお偉いさんでも、お茶屋さんもいはるし、幅広い。京都に根付いてるっていて歴史もあるし、文化に密着してるし、意外に「こんな人と知り合いたい!」って時に同志社の人脈で知り合うこともできるので、厚みがあるすごい学校だと思います。

インタビューを終えて感想

■小峠 雅さん(同志社大学理工学部機械システム工学科4年次生)
今回のインタビューを通じて、今西さんが人と人とのつながりを何よりも大切にし、そこから信用や信頼を築いてこられたことを強く感じました。
15代目として老舗のお菓子屋を継ぐことは、代々受け継がれてきた伝統を守るだけでなく、現代のニーズに応えていくことも求められ、その間で計り知れない努力が重ねられているのだと思います。
インタビュー中も、私たちの足がしびれていないか、部屋が暑すぎないかなど、細やかな気遣いをしてくださり、その言葉や行動のひとつひとつから、今西さんの気配り上手で優しいお人柄が伝わってきました。こうした気配りが、日々のお仕事の中でも大切にされている姿勢なのだと感じました。
また、現場で働かれていた経験から得た知識や感覚を活かすだけでなく、芸術分野や若者に親しまれるカフェとのコラボレーションなど、新たな取り組みにも積極的に挑戦されている点が印象的で、「伝統を守りながらも、和菓子の可能性を広げていく」姿勢に心を打たれました。
これから鍵善良房さんのお菓子をいただく際には、味わいだけでなく、季節感やパッケージに込められた思いにも目を向けながら、その時間を大切に楽しみたいと思います。
この度は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

■睦好 美月さん(同志社女子高等学校3年生)
今回のインタビューを通じて、鍵善良房様が三百年近い歴史の中で守り続けてこられた「菓子作りへの情熱」と、京都の文化を支える誇りを深く学ぶことができました。特に印象的だったのは、看板商品である「くずきり」へのこだわりです。厳選された素材と、注文を受けてから作るという姿勢は、単なる効率を優先せず、お客様に最高の一瞬を提供したいという思いの表れだと感じました。
また、店内に漂う静かで穏やかな空気感や、一つひとつの所作に宿るおもてなしの心に触れ、老舗とは単に古いものを守るだけでなく、時代に合わせて「本質」を磨き続けている場所なのだと実感しました。伝統を繋ぐことの重みと、それを受け継ぐ方々の真っ直ぐな姿勢に触れたことは、私にとって大きな刺激となりました。

【今西さんから次回の同志社人インタビューに登場してくださる方をご紹介いただけないでしょうか。】

御所人形製作者 島田 耕園さんをご紹介させていただきます。
島田耕園さんは京都二寧坂で約160年続く御所人形司の5代目です。昔ながらの製法で作られる耕園さんのお人形は得も言われぬ気品をもった姿ながら、優しさを感じるもので飾られた空間とそれを見る私たちを柔らかな空気で包んでくれます。耕園さんとは祇園祭をはじめ地域のことなのでご一緒する機会が多く、人形を作られている時は厳しい面持ちですが、私達年の離れた後輩にも優しく接してくれる大先輩で、仕事のことだけでなく人生のこと、普段の生活ことなどいろいろと相談にものってくれますし、年の離れた友人のように楽しく遊ぶこともあります。伝統文化を大事ににしながらも、現代の人たちを楽しませるような作品を作られているので、若い同志社の人たちにもとてもためになるお話をしてくれると思います。

——— 次回は、御所人形製作者 島田しまだ 耕園こうえん様(1980年同志社大学法学部卒業)にご登場いただきます!お楽しみに!