同志社創立150周年記念講演会 in 会津若松市

日時:2023年9月23日(土・祝) 
 [午前の部] 10:30~11:30 
 [午後の部] 15:00~16:00

場所:福島県立博物館 講堂
講師:同志社女子大学現代社会学部 教授 山下 智子


 学校法人同志社は会津若松市との間で連携協力に関する包括協定を2012年3月21日に締結している。近年は新型コロナウィルス感染症拡大のために具体的な事業が行えていなかったが、2023年9月22~24日に開催される会津まつり(注1)において、学校法人同志社創立150周年記念講演会を実施することになった。

(注1)会津まつりは会津最大の祭りであり、提灯行列、会津磐梯山踊り、藩公行列、日新館童子行列、鼓笛隊パレードなどが開催される。


 検討の結果、内容は会津若松の出身で2013年度NHK大河ドラマ『八重の桜』の主人公の新島八重に関する講演を行うことになった。
 講師は、日本基督教団会津若松教会牧師の経験があり、現在の研究テーマが「新島襄・八重及びその周辺の人々」である、同志社女子大学の山下智子教授に依頼した。山下教授は、2013年度NHK大河ドラマ『八重の桜』ではキリスト教関連アドバイザーを担われ、主な著作に『新島八重ものがたり』(日本キリスト教団出版局、2012)、編著『群馬のキリスト者たち』(聖公会出版、2012/日本基督教団出版局、2017)などがある。
 
 山下教授からは、講演に先立ち、「NHK大河ドラマ『八重の桜』の放送からちょうど10年が経ちます。このドラマは会津の皆さんにとっても同志社の私たちにとっても思いがけない大きな贈り物であったかとおもいます。今改めて新島八重さん生涯を振り返りながら、ドラマではあまり描かれなかった、彼女が故郷に遺したさらなる豊かな贈り物について、ご一緒に楽しく学んでまいりたいと願っています。」とコメントしている。

 当日は、会場の福島県立博物館の隣にある鶴ヶ城前で会津藩公行列の出陣式があり、NHK大河ドラマ『八重の桜』で主人公・山本八重を演じた俳優の綾瀬はるかさんも特別ゲストで出演し、大いに盛り上がっていた。そのような賑わいの中であったが、午前・午後合わせて約90人の参加があった。

 山下教授は、新島八重の生涯を以下の3つに分けて説明を行った。

1,武士の娘、武士の娘、山本覚馬の妹としての時代
→誕生(1845年1月3日)~襄との結婚(1876年1月3日)

2,新島襄の妻としての時代
→襄との結婚(1876年1月3日)~襄死去(1890年1月23日)

3,篤志看護婦、茶道師範としての時代
→襄死去(1890年1月23日)~八重死去(1932年6月14日)
  
 戊辰戦争を戦った八重は「武士の心」を持っていたが、新島と出会い、キリスト教を知ることで「信者の心」を徐々に持つようになった。

 「あなたがたも聞いているとおり、『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」(新共同訳マタイによる福音書5:43ー44)

ふるさとへの贈り物(1921年)として、以下の2件の紹介があった。
 「心和天心得 新島八重子  七十七歳」(会津への帰省時の揮毫、福島県立博物館所蔵)
 「心の和きものその人は地を嗣かむ」(「会津図書館移転記念 会津三人山川浩・廣澤安任・新島八重子遺墨展覧会」目録、1946年開催)
  →「柔和な人々は、幸いである、その人たちは地を受け継ぐ」(新共同訳マタイによる福音書5:5)


 最後に、山下教授は「八重は『武士の心』に加え、『信者の心』も持つようになった。かつては敵であったものを愛すること、心広くあることの恵み、平和を実現することへ向かう心こそ八重の故郷への贈り物では!」と講演を締めくくった。

来場者の感想

・「己の敵の為にも熱心に祈り」という新島襄の言葉が、八重の心に響いたであろうことが、その後の八重の人生の歩みを見るとよく理解できた。山下先生が講演の中でおっしゃったように、己の敵を愛することまではできないかもしれないが、一人の人間として尊重するということは、改めて現代にも通ずる価値あることと痛感した。

・これまで、新島八重のことはよく知りませんでした。今回、このような講演があることを知って参加したのですが、講師の先生がわかりやすく話をしていただき、たいへん勉強になりました。私は八重さんのように強い人間ではないですが、前向きに、和やかな心をもって生きていきたいと思います。

・世界中で戦争や紛争が起こっている現在においても、新島襄、八重の「信仰、憐れみ、忍耐、ゆるし」などに学ぶべきことは多いと感じた。

・同志社大学と山本覚馬、八重とのつながりが大きかったことは、今回この講演を聞いて、初めて知ることになったのが正直な感想です。会津地方と同志社大学の歴史的にも深い関係を理解し、とても興味がわきました。学生さんには折に触れて、大学にゆかりのあるこの地福島県・会津地方にも足を運んで、歴史、文化、食を直接感じてほしいと思いました。